部下のモチベーション・スイッチはどこ?

組織にいると、自分も含めて様々なモチベーションをもった人に出会うことになる。部下のモチベーションをどうこうしたいと思いながらも、モチベーションのスイッチを探せず悩むリーダーも多いのではないだろうか。

David Rock氏は『Quiet Leadership』で、私たちの脳は情報と情報を常に連結をさせる機械のようであり、その連結の集合体が “マップ”となり、複雑な層を織りなしていると述べている。

“マップ”とは、こうなったらこうなる、これとこれは似ている、と言った、物事のパターンを整理した構造、すなわち人間の”思考”といえる。

Rock氏は、モチベーションについてこう語っている。

今までつながっていなかったアイディアとアイディアがリンクされ、新しいアイディアが生まれる。この瞬間に新しい”マップ”が作られる。(中略) その時大量のエネルギーが放出される。(中略)新しい”マップ”を作るとき、私たちはモチベーションが湧き、何かがしたくなり、顔や声も変わるのである

David Rock, Quiet Leadership

モチベーションはコピペできない

もし私がプロジェクトリーダーで、メンバーのモチベーションに悩んでいる場合、ここで重要なのは、エネルギーは外部から転写できるものではなく、メンバーの脳内で発生するしかないという点と、メンバーが保有している既存の”マップ”とコネクションしなければならないという点だ。

つまり、リーダーが出来るのは、メンバーが新しい”マップ”を作る手伝いをすることにつきてしまう。自分のパッションを語ったり、期待値を説明するよりも、メンバーにどのように指南したら”自ら考える”ことができるかを考え実践し、より高いモチベーションが生まれるよう、メンバーのプロジェクトや仕事におけるビジョンを既存の”マップ”に組み込んでおくことなのではないかと考える。

ポテンシャルエネルギーの要素

既存の”マップ”がモチベーションにどう作用するか、物理でいうところの、ポテンシャルエネルギー(Potential Energy, PE) に例えて考えてみる。

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ポテンシャルエネルギーの公式は次の通りである。

PE (Potential Energy) = mgh = mass * gravity * height

  • PE = 位置エネルギー =ある高さに位置することで物体が蓄えられるエネルギー
  • m = mass , 質量, 重ければ重いほど位置エネルギーが増す, given condition, 長期的に作られた条件
  • g = gravity, 重力, 惹きつけられる力
  • h= height, 高さ, 高ければ高いほど位置エネルギーが増す, 状況によって変わる変数

モチベーションにこの仮説を当てはめると(思考実験的な仮説):ー

ME(Motivation Energy) = thinking pattern * new map attractiveness * vision

  • ME = モチベーションエネルギー
  • thinking pattern = 既存の”マップ”のHOW= どんな思考を持っているか、どれだけ思考できるか
  • new map attractiveness (nma) = 新しい”マップ”の魅力度 = 新しく提供された情報や作られた”マップ”がどれだけその人を惹きつけるか
  • vision = 既存の”マップ”のWHY = 個人のビジョン = なぜその仕事をしているか

新しい”マップ”を脳内に作る

既存の”マップ”は、質量のように長い期間によって作られた条件と、志のように目指す先を状況によって設定される変数の2種類に分けられる。

なんでもある程度こなせる人は、新しいチャレンジにも前向きな思考パターンで望め、モチベーションも高い。しかし、常に仕事が難しいと感じてきた人は、チャレンジをリスクと捉え、モチベーションの量も少なくなるだろう。

また、ビジョンは、目指すところの高さとすると、ポテンシャルエネルギーの高さと同じ性質の変数となり、ビジョンが高ければ高いほど、モチベーションエネルギーは大きくなる。

例えば、あるメンバーにとってプロジェクトの新しい”マップ”の魅力度(nma)が低い場合、気の進まないプロジェクトだと感じるだろう。しかし、もともと「楽観的」というような既存”マップ”を持っていたり、個人のビジョンが高ければ、総合的には十分なモチベーションでプロジェクトに臨むことができるだろう。

このように、モチベーションをあげたい場合は、脳内に新しい”マップ”を作る思考に取り組み、個人のビジョンを既存の思考パターンに組み込むことが効果的だろうと考える。

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