ブランド戦略を検討する際、SWOTやカスタマージョブなどのフレームワークを用いて考えることで、ぬけもれなく、目的にあった思考が可能になる。しかし、フレームワークには、解答用紙のマスを埋めるだけで”分析”した気分になってしまう作用があり、資料が出来上がっても、さして何も新しい考えにたどり着かなかった経験はないだろうか。

ブルームの分類法(bloom’s taxonomy、改訂版)によれば、思考スキルは6つのレベルに分けられ、最も基礎的な”記憶”から、高次元レベルの”創造”までがある。

  • 創造 (Create)
  • 評価 (Evaluate)
  • 分析 (Analyze)
  • 応用 (Apply)
  • 理解 (Understand)
  • 記憶(Remember)

マーケティングでは、より多くの顧客にブランドのファンになってもらうべく、現状を打開した戦い方を見出すことが目的となる。そのため、フレームワークを用いる際、ただ、現状をマス目に置いていくだけでは、現象を整理しただけに終わってしまう。

オーストラリアの教育コンサルティング会社 itc publicationsは、学校教育向けに”Thinking Skills Lesson Launchpad”(思考スキルのレッスンパッド)を発行している。教師が問題を出す際、学習して欲しい思考レベルにあった動詞を用いたり、生徒が、宿題を取り組む際、考え始めるきっかけやツールを参照できるようになっている。

出典 Thinking Skills Lesson Launchpad by itc publication

例えば、”特徴のあるパッケージ”という属性を、SWOT分析の”強み”としたケースで考えてみる。応用レベルの思考スキルだと、その属性を、強み(S)に分類(Classify)しただけになってしまう。さらに上の思考スキルの、分析(Analyze)レベルの場合、”特徴あるパッケージ”がどのような印象を与えているかを、調査(Investigate)し、ブランドが抱えるイシューを分解し(Deconstruct the issue)パッケージ周辺に課題はないかを見極めたりすることが求められる。さらに、itc publicationのレベルでいう、判断(JUDGE)レベルでは、”特徴あるパッケージ”について評価をし、なぜそれがいいのか、もしくは悪いのかに対し自分の見解をもち、状況によっては、相手を説得できる論点を出すレベルが求められている。

この3つのレベルの違いは、戦略性の質の違いとも言える。”特徴あるパッケージ”が、「パッケージが強みなんだな」という漠然とした認識から、「パッケージが与えている”透明感”という特徴が、顧客が求める自分像と合っているのが強みなんだな」という具体的な価値を特定し、さらには、「透明感という価値提案が今までの強みであったが、競合が同じようなパッケージで製品を出してきたたため、差異がなくなってきており、新規顧客への強みが相対的に減少している」という競合との力関係を分析し、パッケージ以外の強みを構築しないといけないという”判断”を導きだすことが可能になってくる。

フレームワークの空白は、見ていると埋めたくなってしまい、一度埋めるとなかなか消せないという場合があると思うが、思考スキルのレベルを上げるには、次の方法をおすすめする。フレームワークに列記する要素を一つ、ポストイットに書き出す。次に、書き出したポストイットを、Thinking Skillレベルと照らし合わせ、この文章は、どのレベルの思考スキルだろうか?を確認する。基礎レベルになっていたら、新しいポストイットに、同じ要素で高次元の動詞を用いるには、何が言えればよいのだろうか?を考え、文章に表現する。それを各要素で繰り返し行い、各要素の一番思考スキルが高いものをフレームワークに清書すれば、かなり考え抜いたアウトプットになると思われる。

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参考:itc publications