4月6日-7日の週末に、ジョリーフォニックスというイギリスの英語教育のトレーニング研修に参加した。私自身、中学校の英語の成績が“2”のまま、オーストラリア/シドニーで現地高校へ通ったため、別の意味でHard Way(苦労して)に英語を学んだ。

ジョリーフォニックスとは、イギリスで開発された英語教育の手法とその教材を指す。主な特徴は、言語を習得とするアプローチにおいて”音と形の関連性”を基礎としている点である。

音と形と名前は別の引き出しに

現地でがむしゃらにESL(Englishg for Second Language)の家庭教師に英語を習った当時、言語がどんな要素でできているか考えもしなかったが、言語は、インプットとアウトプットで6つの要素があると気づいた。

言語に関するインプットとアウトプット

幼少時から周りが使っている言語を聴きながら育ち、読めなくても文字の形を認識し、家族から語りかけられ、文章の意味を自然に学んでいく。その後、自身でアウトプットできるようになり、話したり、読んだり、書く能力を身につけていく。
第二言語の場合、インプットが圧倒的に少ない中、アウトプットを学ぶことになる。そして、日本語と英語で決定的に違う点が、音と形である。

あ 文字の名前 = 文字の音
a 文字の名前 ≠ 文字の音

日本語のひらがなは、すべて文字の名前が文字の音である。文字「あ」は、名前が”ア”といい、文字の発音も、”ア”である。しかし、英語のアルファベットの「a」は”エイ”という名前をもち、文字の発音は”ア”である。

幼児教育で英語のアルファベットの歌、”エービーシーディーイーエフジー”、を覚えても、英語を読んで発音できるようにならない理由の一つはここにある。

名前と音は別の引き出しに

中学生が英語を習い始めたころ、英語で”ピンク”と聞いて、”penk”と書いてしまったり、”リング”と聞いて、”reng”と書いてしまうのは、アルファベットの「e」を”イー”と覚えており、文字の名前と音を分けて理解していないことが原因といえる。

日本語が母国語の場合、文字の形と音をあまり区別しなくてもよかった。話し言葉の文章を幼児期より聞いているうちに、音が身体に入ってき、その後、小学校で、文字の形を習う際、”あ”という音に対して、”あ”という文字(形)をマッチングしていけたわけだ。

ジョリーフォニックスでは、英語を学ぶ際、初めの段階で文字の名前はいっさい覚えない。先生も「s」をみても、”エス”とは一度も言わないで授業がすすむ。覚えるのは、”ス” (/s/)という「s」が持っている音と、「s」という文字の形。

たくさんの/s/を、様々な形式で先生が表現してくれる。ストーリーや、歌、音のクイズや、音の分解。指でなぞったり、声をだし、多感覚に/s/と「s」を体験していく。
言語の入り口では、不必要な情報は省き、アプトプットするために必要な音と形の基本をゆっくり丁寧に引き出しに入れていく。

音にはサイズがあり、英語の方が小さい

次に、音の大きさの違いを理解したい。
日本語の音の最小単位は、ひらがなの各音、1文字1音、”あいうえお、かきくけこ・・・”である。これは、子音+母音で構成されており、拍(はく)とよぶ。

それに比べて、英語は、子音 or 母音が最小単位で、子音と母音とくっついた音は存在しない。

音の最小単位

感覚的には、日本語の拍は、まとまりがあり球体もしくは四分音符のイメージだが、英語の子音は、単体で聞いても意味をなさず、イオン化した分子のようである。

この違いを中学生で学んでも実は遅い。混乱したまま英語に触れているのが実態ではないかと思う。原因は、小学3年生で習うローマ字にある。ローマ字は、英語のアルファベットを用いて書く、”拍”(子音+母音)である。ただし、表現しているのは日本語。かっこよくて、何でもローマ字で書いたのを覚えている。自分の名前はローマ字で書くのは正しいが、電車を”densha”と書いたり、友達を”tomodachi”と書いて英語的雰囲気を楽しむと、柔らかい脳みそに間違った引き出しを作り、言語と文字の間違ったタグづけをしてしまう。とても残念だ。

山下先生曰く、ローマ字について子どもに次の3つを明確に教えるが肝要とのこと。

  • ローマ字は英語ではありません
  • ローマ字は、外国の方が日本語を読むのに使うもの
  • ローマ字はパソコンの入力時に使うもの

ジョリーフォニックス流は、学ぶツールを授ける

2020年から小学校での英語教育がスタートする。松戸市は6年後に英語学習としてジョリーフォックスの導入を予定しているという。

ジョリーフォニックスの英語教育は、小学校で日本語をひらがなから習うように、音と形から学んでいく。現在の中学校の教科書のように、音と形の基礎なしに、文章や単語をただただ覚えるアプローチとは全く異なる。

音と形を覚えると、ジョリーフォニックスで教わる3文字、s, a, t だけでも、読めて言える単語がでてくる。これは、暗記する単語の数をただ増やすのではなく、子どもが、読み方と発音の仕方を教わることで、自ら言語を発見する経験を作り出せる。

オーストラリアのitc publicationが発行する “Thinking Skills”によると、思考レベルは6レベルに分けられる。一番下のレベルは、「Remember 記憶」、次が「Understand 理解」、3段階目が「Apply 応用する」である。

山下先生が、ジョリーフォニックスは子どもに「操作する」力を与えていると説明していたが、まさしく、思考レベルのApplyがそれに当たる。暗記は、思考レベルでいうと、Rememberだ。

暗記しつづけても英語のアウトプットが向上しづらい教育方法から、言語を自ら発見できるツールを学ばせる方法に転換することで、学ぶ喜びと第二言語の習得の両立が可能になる。英語の入り口がジョリーフォニックスであることで、より自由に、より楽しく、英語を手に入れられるだろう。

詳しい学習方法など、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

参考:design by freepik
山下桂代子 ジョリーフォニックス総合トレーニング 2019年4月6日7日 日本橋

itc publications

2019年4月18日現在、山下先生が入院されているとのこと。1日も早い快復をお祈りしております。

山下先生とCertification